AI開発を手がけるAnthropicは、サイバー攻撃からシステムを守る防御側を支援する長期的な取り組み「Cyber Mission」をスタートしました。最先端AIが悪用されるリスクが高まるなか、ソフトウェアの基盤となるオープンソースや社会インフラの安全性を高めるため、無償の診断ツールや技術提供を進めていく方針です。
この記事の要点
- オープンソースプロジェクト向けに無料で定期診断を行う「OSS Scanner」を提供開始
- 電力や水道網などの制御システムを守る「重要インフラ防衛プログラム(CIDP)」を新設
- 日立製作所やPwC、クラウドストライクなど日米の主要セキュリティ企業と連携
OSS向けにAI脆弱性診断を無償提供する「OSS Scanner」
世界中のソフトウェアで使われているオープンソースコード(OSS)は、少人数の有志によって保守されているケースが少なくありません。今回の施策で登場した「OSS Scanner」は、そうしたプロジェクトを対象に、Anthropicの高性能モデルを活用したセキュリティ診断を定期的に無料で行うサービスです。

Googleの「OSS-Fuzz」に着想を得たオプトイン形式で運用され、参加したプロジェクトには脆弱性の実証コード(PoC)や修正案を含むレポートが直接届けられます。人間による事前チェックを省いて迅速に通知する仕組みとなっており、90%以上の適合率を目指しながら修正サイクルの高速化を支援する狙いです。あわせて、Pythonソフトウェア財団やApacheソフトウェア財団などへの資金支援も継続されます。
電力や水道の制御システムを支える防衛プログラム
もうひとつの柱となるのが、社会を支える運用技術(OT)を保護する「重要インフラ防衛プログラム(CIDP)」です。発電所や浄水場、交通網などで使われる制御機器は、一度稼働させると簡単に停止してパッチを適用できない難しさがあります。

このプログラムでは、現地の現場にClaudeモデルやエンジニアを投入し、脅威調査の知見を提供します。設立パートナーには、日立製作所をはじめ、Accenture、Deloitte、CrowdStrike、Palo Alto Networks、PwCなどが名を連ねました。機器メーカーやセキュリティ専門企業とタッグを組み、AIを活用した攻撃が高速化する前に防御体制を固める狙いがあります。
防御側への技術開放とこれからの展開
Anthropicはこれまでも「Project Glasswing」を通じて脆弱性の発見と報告を行ってきましたが、問題を見つけること以上に、検証して修正を完了させるまでの負担が大きいことが課題となっていました。今後は検証プログラムを統合し、認定されたセキュリティ技術者に対して制限の緩和されたモデルアクセスを開放していきます。
日常的に使う個人のガジェット環境がすぐに変化するわけではありませんが、ネットの根底を支えるOSSやインフラの安全性が高まることは、巡り巡ってすべてのユーザーの安全性向上につながる動きといえそうです。


コメント